単純で複雑な感情 渚誕生日。 「何でも言う事を聞いてあげるよ」 そのたった一言で、世界が魔法に掛かったかのように輝いて見える。 今日は特別な日で、年に一度の僕の誕生日だから、シンジ君が僕の言う事を何でも聞いてくれるらしい。 何を言おうかとか、どこまでのムチャなら聞いてくれるのかとか、本当にしたいことを言っていいのかとか、考えるだけでドキドキして、楽しい。 でも、考えているだけじゃ勿体ない。 シンジ君としたいこと。本心をありのままに言おう。 「シンジ君、呆れないで聞いてほしいんだけどさ、僕シンジ君とその……」 「何?」 ドキドキしながら切り出したら、少し声が強張ってしまったみたいだ。 その緊張が伝わったみたいで、シンジ君も少し硬くなる。 「ヤっていい?」 「はぁー……」 シンジ君の口から拍子抜けしました、みたいな息が漏れる。 だから呆れないでって初めに言ったのに。 「確かに僕はそればっかかもしれないけど、せっかくの誕生日なんだし、だから呆れないでって……」 「別に呆れた訳じゃないって。改まって言う事がそれかと思っただけで」 「呆れたんじゃん」 「呆れてないって。だって……」 そこでちょっと口ごもる。 ちょっと目を伏せて、ほんのり頬を赤くして。 あ、きっと言いにくいことなんだ、と思った時にはシンジ君の口から言葉が漏れていた。 「……元から僕はそのつもりだったよ」 「シンジ君っ!」 その声が耳に届いた瞬間には僕はもうシンジ君を抱きしめる形で倒れこんでいた。 「ちょっと、もう、何……いきなりびっくりするなぁ……」 「だってシンジ君が僕としたいって」 「なっ……えっ……あ……」 さっきのほんのり色づいた赤とは違って明らかに真っ赤になって、口をパクパクさせ始める。 さっきは赤くなりながらもしっかりと言葉を紡ぎだしていたのに、今は慌てて言葉をばら撒いている。 「ち、違う。別に……そうじゃない。君ならどうせそう言ってくる予想はしてたってだけで別に……そういうのじゃないから」 熟れた果実のように赤くなったシンジ君は美味しそうで、本当に可愛い。 だから、ついからかってみたくなる。 「僕がお願いするならこういうことするってわかってたんでしょ? なら、何でも言う事聞くなんてわざわざ言うなんて誘ってるのとどう違うの?」 ああ、でもこの体勢のままずっと我慢なんてできない。 先にちょっとだけ味見をしよう。 シンジ君の首筋に舌を這わせる。 「んっ……や、でも別に渚が必ずしもそう言うとは……」 「言うよ。お願い聞くなんて言わなかったとしても言ってた。シンジ君もわかってただろ?」 「……」 僕の好きな赤くて美味しそうな頬に舌を動かしていく。 「どうしてもそういうことにしたいの?」 「したいも何も事実でしょ? シンジ君がしたかったんじゃない?」 「百歩譲って僕から誘ったんだとしても、それは渚が喜ぶかと思っただけでこういうことするのが好きなわけじゃ……」 おっ、ちょっと押されてるみたいだ。けど、ここで手は緩めない。 ちょっと聞き捨てならないことも聞いちゃったし。 「えー、シンジ君こういうことするの好きじゃないのー? 僕シンジ君を満足させてあげられてないのー? ショックだなぁ……」 かなり大げさに傷ついたふりをしておく。 シンジ君がこういうことをするのが嫌いじゃないなんてとっくに見抜いているんだから。 「う、いや……それはその……ひゃっ!」 シンジ君の下半身に手を伸ばす。 ズボンの上からシンジ君の下半身を撫でていく。 「僕にこういう風に触られるの嫌?」 「ん……あ……何、渚今日は随分意地悪じゃん……はぁっ……今日はこういう趣向でヤりたいの?」 話を逸らしてきた。 そろそろ答えに困ってきたのかもしれない。 けど、まだ虚勢を張る元気はあるらしい。 シンジ君は一筋縄ではいかない。そういうところも好きだけど。 「んー、いやいや、シンジ君に意地悪したわけじゃないんだよ。ただ今日はシンジ君に素直になってほしいなぁって」 「ん……まぁ……今日くらいは……努力する」 本当はこうやって口実を作って強制するものじゃないんだろうけど。 でも、無理なお願いなら何でも言うことを聞くなんて、例え自分から言い出したとしても守らなくてもいいはずだ。 シンジ君も僕を祝おうとして喜んでもらおうとしてくれてるんだって、嬉しくなる。 「ん、で、ここいいの?」 下半身を触る手に力を入れる。 「あっ……そ、そんなの聞かなくったって、見たらわかるだろ……」 「えー、ちょっと、シンジ君。素直になるんじゃなかったの?」 「いや、努力はするけど、でも恥ずかしいもんは恥ずかしいの! もっと余裕なくなってきたらわかんないけど……」 「シンジ君ってさ……煽るのうまいよね」 「別に煽ってないけど……ちょっ……」 シンジ君のズボンを下ろして、直接シンジ君のモノに触れる。 「んん、もう……何だよ、さっきからいきなり……」 「シンジ君がいちいち煽るから我慢できないんだって……」 「いや、だから煽ってないし……ん……」 自分のを取り出して、シンジ君の後ろに擦り付ける。 「ん……んぅ……」 「どう? いい?」 「いちいち聞くな……」 「いいよ、絶対言わせるから」 自分のをシンジ君の後ろに擦り付けつつ、胸の突起を摘んで弄シンジ君のも上下に扱く。 「んあっ……はぁっ……」 ぎゅっと制服の袖を掴んでくる。 もうこれだけで僕としては一刻も早くシンジ君とより深くまで繋がりたくなってしまうのだけれど、シンジ君の素直な気持ちを聞くまで我慢することにする。 我ながら欲張りだ。自分の中にこんなにも欲があっただなんて、シンジ君に出会って、色んな感情を知る一方だ。 「ぅ……渚、まだ?」 「ん?」 「ぁ、んっ……入れないの?」 「入れるよ」 「じゃあ、何で……?」 「入れてほしいの?」 「……意外と渚って……んっ……」 「ん?」 さっきから僕にしがみついてきて、見るからに我慢の限界といった感じだ。 努力するといった割には随分素直じゃない。 もういいよって笑って言ってあげたいような、もう少し我慢しているシンジ君を見ていたいような。 そんな気持ちのせめぎ合いはシンジ君の一言によって崩れた。 「もっ……渚、早く……」 「入れてほしいの?」 こくん、と首を下げる。 可愛い。 僕にここまでされて、ついに我慢できなくなって、素直になっているシンジ君が。 望み通り、いや僕が望ませたのだけれど、シンジ君を解すために指を入れる。 「あっ……あぁっ……」 「ちょっ……まだ指なんだけど……そんなに我慢してたの?」 「うるさい、渚が焦らすから……あっ……あん……はぁっ……」 「声押えないで。僕に縋って」 「ん……」 僕の言うとおり、シンジ君の手が背中に回る。 こんなにシンジ君が可愛かったら、もうすぐにでもイってしまうかも。 シンジ君のカベニ擦り付けるように腰を動かす。 「はぁ……ぅ……そこ……」 「ん、ここ、いいの?」 「んっ……」 シンジ君がいいと言ったソコを強く擦りあげていく。 「あぁっ……ぁんっ……はぁっ、ん……」 「イくよ、シンジ君」 「んっ……」 僕達は共に欲を吐き出した。 「どう、良かった?」 僕の横で丸くなっている背中に話しかける。 「……だから、何でいちいち聞くかなぁ」 「聞きたいから?」 「……良かった……かも……」 「じゃあ、もう一回!」 「もう、そうやってすぐ調子に乗る……」 「だめ?」 「……言っとくけどこれは渚の誕生日だから大人しく従ってるだけだから」 そう言いながら僕に近寄ってくると、僕の胸に顔を埋めてくる。 「あはっ」 「何がおかしいのさ?」 「シンジ君、可愛い!」 僕の胸の中のシンジ君を抱きしめる。 「はぁ?」 「シンジ君ってツンデレかと思ってたけど、結構デレデレだったりするよね」 「別にツンデレだったつもりもないし、デレデレでもない! ……と思う……」 少し思い当たるのか声が小さくなっていく。 「まぁ、いいや。もう一回もう一回」 「ほんと元気だよね……」 きっと僕は嫌な感情も沢山知ってしまったのかもしれないけれど、やっぱりシンジ君が好きだって、この魔法みたいな感情を知れて良かったなって思う。 僕はシンジ君が好きだ。 どんなシンジ君も好きだけど、こうやって僕の誕生日を祝おうとしてくれているシンジ君はやっぱり格別だ。 終 ------------------------- 割とかなりデレデレ。 H24.11.7 戻る [*前へ][次へ#] |